第8話 ミツバチと秘密の初恋相手

 ※ショタ×ショタです

 薔薇のように美しくて、薔薇のように棘があって、だけど近付かずにはいられない、そんな人だったんだよ。
 その人は皆から大人気で、周りにはいつも女の子も男の子もいた。特別優しい訳じゃないどころかちょっと意地悪だったけど、それを余裕でカバーできるくらいに綺麗な人だった。とにかく綺麗な人だった。

「思い出すと、ちょっと赤くなるなぁ」
「へえぇ、蜜羽の初恋相手かぁ……。そんなに綺麗な男なら、一度見てみてえなぁ」
「ふふ。俺もいつも、その人のこと追っかけてた」
「薔薇を追いかけるミツバチだな。……で、そいつとはもちろんヤッたんだよな?」
「してないよ! 幼稚園の頃の話だし」
「隠すなって、聞かせろよ」
「………」

 あれはまだ、俺が泥んこで雨上がりの公園を駆け回っていた頃の話。

 引っ越してきた男の子の名前は、薔薇園ばらぞのイツキくん。その名の通り薔薇のように綺麗な子だった。口数が少なくて無表情だけど、その美しさゆえに黙っていても惚れられてしまうような、そんな人。

 俺は先生に作ってもらったミツバチの羽が大のお気に入りで、いつもそれを背負って走っていた。空を飛ぶことに憧れる年頃だった。

「蜜羽だよ、よろしくね」
 公園で出会った彼に、俺はそう声をかけた。一人砂場で遊んでいた彼は得意げに笑う俺を見上げて、素っ気なくこう言ったっけ。
「ミツバチのくせに、針がないじゃないか」
「でも羽はあるよ! 針は誰かに刺さると痛いから、取っちゃった」

 イツキが少しだけ笑って、俺を砂遊びの仲間に入れてくれた。嬉しくてドキドキしたのを覚えている。トンネルを開通させるのに手が触れ合った時は、訳の分からない痺れが体中に走ったっけ。彼のことを好きだと思ったのは、多分その時だ。

 イツキは人気者だったけど、いつも俺と一緒にいてくれた。小学校に上がってからも、大人しかった俺が教室の隅っこで絵を描いていると、いつの間にかイツキが来て隣に座ってくれていた。大抵、「へたくそ」となじられたけど。

「可愛らしい少年達の思い出話はいいからさ、もっと色っぽい話聞かせろよ」
「……そんなの、なかったってば」
「思い出せ。あるだろ、ほらほら!」
「そんな。……ええと……」

 ええと、……あれは別に色っぽい話じゃない。イツキの家に遊びに行って、クッキーを食べさせてもらって、少しだけ二人で昼寝をして、……

「蜜羽。おまえ、ここ触ったことある?」
 起きたらイツキが布団の中で、俺の股の間に触ってきた。ちょっとだけきゅんとなって、でも何だか恥ずかしくて、俺は寝たままふるふると頭を横に振ったんだ。

「五年生の兄ちゃんが言ってた。ちんこ触ると気持ち良くなるんだって。……蜜羽、気持ちいい?」
「わ、分かんないよ……」
「蜜羽のちんこ、小っちゃくて可愛い。やわらかいし、あったかい」

 すごくいけないことをしてる気がした。だけどこんな時でもイツキは綺麗で、ちょっと意地悪で……。

「見てもいいか」
「え、……見るって、ちんちんを? 恥ずかしいよ」
「おれのも見せるし」

 俺の返事も待たずに、イツキが布団を跳ね除けて自分のパンツを脱いだ。小さくてぷるぷるの幼いあそこは今でも覚えている。思えばあれは、俺が初めて他人のペニスを見た瞬間だった。

「おまえのも見せろ」
「わ、分かったよ……」
 半ズボンを脱いで、ハチの絵が付いたパンツを脱いで、俺も自分のそれをイツキに見せた。あんまりにもじーっと見つめられて、胸のドキドキが止まらなくて、物凄く恥ずかしかった。

「あ、あんまり変わらないね」
「……おれの方が大きいと思ってたのに。ムカつく」

 俺達は膝立ちになってお互いのそこを見せ合いながら、ちょっとだけ笑った。女の子にこれが付いていないのは知っていたから、恥ずかしいけど男同士の友情みたいなものだと思っていた。
 だけど次の瞬間、イツキがとんでもないことを言ったんだ。

「蜜羽のちんこ、舐めてもいい?」
「えぇっ? やだよ!」
「兄ちゃんが言ってた。触るのも気持ちいいけど、舐められるともっといいんだって」
「……イ、イツキのお兄ちゃんは、そんなことしてるの……?」
「ううん、してない。学校でそういうこと話してるだけだって」

 どこかホッとしたけれど、それも束の間のことだった。

「だから、蜜羽のちんこ舐めさせて。気持ちいいのかどうか知りたい」
「で、でもさ。それなら、僕がイツキのちんちん舐めた方がいいんじゃない? 僕の舐めてもイツキは分からないじゃん」
「………」
 それもそうか、という顔だった。

 その頃はちんこなんてトイレをするところという認識しかなかったから、本当は舐めるのなんて嫌だったけど……綺麗なイツキに自分のそれを舐めさせるくらいなら、俺がした方がましだと思ったんだ。

「足、開いててね。あと、いきなり上からチョップとかしないでね」
「しない」

 布団の上で開かれた細くて白い脚、その間で揺れている小さなもの。俺は体を丸めて小さくなり、恐々伸ばした舌でイツキのそれをちろ、と舐めた。
「んっ」
「気持ち良かった?」
「分かんない。もっかいやって、蜜羽」
「う、うん……」

 同じことをすると、イツキの体がビクビクと震えた。びっくりして顔を上げると、そこには……
「はぁ、……」
 綺麗な顔を真っ赤にしたイツキがいた。

「ど、どうだった?」
「……気持ちいい……」
「ほんと? お兄ちゃんが言ってたの、本当だったね」
「もっとして、蜜羽。俺がいいって言うまで」
「えぇっ」

 仕方なくイツキの股に顔を埋めて舐めていると、先っぽから透明な体液が出てきた。おしっこかと思って咄嗟に口を離したけれど、どうやら違うみたいだった。

「蜜羽、もっと……」
「ね、ねえ。そんなに気持ちいいの?」
 好奇心が抑えられなくて訊ねると、イツキが子供とは思えない妖しい笑みを浮かべて言った。

「やってやろうか?」
「………」

 誰もいない家の中。部屋のドアはしっかりしめて、念のために布団も被って、パンツを脱いで脚を開いた俺は、布団に潜ったイツキの舌で……

「ひゃ、……あぁっ、あん、んっ……」
「蜜羽。ちんこ気持ちいい?」
「わ、かんない……。い、……やあぁっ……」

 俺が想像していた「気持ちいい」は、耳かきをしてもらったり、ふわふわのタオルで体を拭いてもらったり、仔犬を撫でたりした時のそれだった。

 だけどちんこを舐められる「気持ちいい」はそれとは全然違くて、ドキドキして、恥ずかしくて嫌なのに止めて欲しくなくって……変な感じだった。

「イツキ、やぁっ、やだぁっ……」
「何でそんな声出てんの?」
「出ちゃう、んだよぉ……!」
「なあ蜜羽。ここは? 玉も気持ちいい?」
「んん、……そこは、よく分かんない……」
「やっぱちんこだ。なあ、どんな感じ?」

 イツキの小さな舌が、俺の小さなそれをぺろぺろと猫みたいに舐めている。裏側から撫で付けるように、皮に包まれた幼い先端をくすぐるように。

「ぞくぞくする、イツキ……! 変な感じする、おしっこ漏れそう……!」
「何で? ちんこ舐めるとおしっこしたくなるってこと?」
「僕、トイレ……! トイレ行きたいっ」
「いいよ、ここでしても。蜜羽がお漏らししたって言えば、おれは怒られないし」
「やだよ、ぉ……汚しちゃう」

 イツキはただ好奇心を満たしたかったのだと思う。不思議で堪らないから、その答えを知りたかっただけなんだろう。

「なあ、おしっこ出るまで舐めていい?」
「だ、だめぇ……! あんっ、だめだってば……! あっあ、あっ! ……あぁ……」
 流石にその瞬間は口を離していたけれど、布団を剥ぎ取ったイツキにばっちりと見られてしまった。

「ふあぁ……だめって、いったのに……」
 赤ちゃんみたいに股を開いて、いっぱい舐められた先っぽからちょろちょろとお漏らししている姿を……イツキがじっと見下ろしている。ある意味ではちんこを舐められるよりも恥ずかしい行為だった。

「いつきの、ばか……」
 お漏らし=馬鹿にされる。だから俺は泣いてしまった。恥ずかしくて、股を開いたまましくしく泣いてしまった。

「ごめん蜜羽、でもこれで分かった。ちんこ舐めるとおしっこが出るんだよ。トイレ我慢して、やっとおしっこできた時って気持ちいいじゃん。たぶん、それと同じなんだ」
「そ、そうなのかな……」
「だから泣くな。おれも漏らすとこ見せる」
 言うなり、イツキがその場にしゃがんで放尿し始めた。俺が漏らしたところの上から、被せるように。

「なあ、蜜羽。おれ達だけのヒミツだぞ」
「う、うん……」
「明日もうち、誰もいないから。明日もちんこ舐めっこしようぜ」
「えぇっ、……う、うん」

「――っていう感じかなぁ。そのうち舐めるだけじゃなくしゃぶったりするようになって、段々それがエッチなことなんだって気付き始めて、精通してからは普通にイくまで舐めっこしてたよ。おっぱい吸ったりもしてたから、俺の乳首開発したのはイツキだね。あはは」
「何だそりゃ! 舐めっこに放尿プレイって……蜜羽、お前という奴はガキの頃から……!」
「皆も俺くらいの時に同じことしてるんだと思ってた。だって皆、俺よりずっとエッチなことに詳しいし……」
「……お前がぷりぷりのチンポコ舐められてる間に……俺達はなぁ、鼻水垂らしてアホみたいにチョウチョを追っかけてたよ! 悪かったなぁ、ガキで!」
「そ、そんな怒られても」

 それにしてもイツキ、今頃何してるだろう。
 初恋の相手って、たまに思い出すと変な気持ちになる。
 胸がドキドキして、頬が赤くなって、――初恋って、何だかいいよね。

「お前のそれは初恋じゃねえっ、初フェラの相手だっ!」

 第ハチ話・終