HAPPY DAY -4-

「お」
「………」
「ジッポライター」
 喫煙する潤歩のために選んだジッポには、俺と潤歩の名前、それから今日の日付が刻印されている。シルバーだから潤歩のアクセサリーにも合うし、デザインも彼好みの物をチョイスしたつもりだ。
「そ、そっちは誕生日プレゼントです」
 箱の中に仕切りを入れて二分割し、片方にはジッポを、もう片方には生チョコを入れてある。小ぢんまりとして可愛い見た目になるように、獅琉が協力してくれたのだ。

「……俺は煙草吸わないから、ジッポと百円ライターでは煙草の味が変わるっていうの、よく分かんないですけど……。潤歩さんいつもライターがねえって騒いでるから、これならいつも持ち歩いてもらえるかなって……」
 潤歩がどんな表情をしているのか見るのが恥ずかしい。俺は抱えた膝に顎を乗せて唇を尖らせ、正面だけを見て言った。
「チョコの方も、甘くなり過ぎないようにしたので……無理そうだったら俺が食べますけど」
「俺を見くびってんじゃねえぞ、亜利馬。貰いモンを食わずに返すような男だと思ってんのか」
 赤面しながら怒るのは、照れている証拠。
「てめぇが作ったんなら食うしかねえだろ」
 分かっているから、嬉しい……。

「ん」
 潤歩が生チョコを一つ摘まんで口に入れ、もう一つ摘まんで俺の方へ向ける。素直に口を開けてチョコを入れてもらい、そのほろ苦い幸せの味に目を細めた。
「美味えじゃん」
「ほんとですか?」
「お前が作ったにしては」
「へへ。……潤歩さん、誕生日おめでとう」
 ようやく一番重要なそれを言って、俺は口の中でチョコを転がしながら潤歩の肩に頭を寄りかからせた。

「ご飯、食べましたよね? お風呂沸かしますか?」
「何勝手に終わらせてんだ?」
 潤歩が俺の肩に腕を回し、頭を優しく撫でる。
「もうちょっとチョコ食べます?」
「……よく知らねえけど。バレンタインって別に、片方しかあげちゃいけないモンじゃねえんだろ」
「まあ……確かにそうですね。本来はお世話になってる人に感謝する日って意味らしいし」
「ほれ」
 言い方はぶっきらぼうでも自信ありげに笑いながら、潤歩がベッドの下から取り出した長細い箱を俺の膝の上に置いた。
「わ……」
 まさか潤歩がバレンタインプレゼントを用意していたと思わなくて、焦ってしまう。
 ラッピングも何もされていない箱を開けると、中には動物の形をしたチョコレートが入っていた。

「あっ……。これ、ブレイズだ」
 ライオン、狼、ドラゴン、トラ、そして馬。小さな可愛い動物のチョコが五つ、横に並んでいる。
「それよ、店員に言えば好きな動物詰めてくれるってやつ。他にもペンギンとかネコとか色々あったんだけど、考えるの面倒臭せぇからブレイズで揃えてやった」
「可愛い。……凄い嬉しいです……」