亜利馬、人生最高の1日 -2-

 部屋に入って温めた弁当をテーブルに置き、正面に座ったケンさんのカメラに向かって「いただきます!」と手を合わせる。クリスマスなんだから弁当ではなく豪華な食事やケーキも用意するべきだと思ったけれど、「素の俺」が良いということで、いつもとさほど変わらないメニューだ。
「乾杯!」
 シャンパンに見えなくもない炭酸飲料が入ったグラスをカメラに向けて、一口飲む。こんな平凡なクリスマスで良いのだろうか。部屋の中も普段通りで、飾りもツリーもない。
 それからしばらくカメラに向かって返事のない会話をした。休憩を挟みながら撮っていたからだいぶ時間がかかってしまったが、そろそろこの撮影も終了だ。
「一緒に寝ようか」
 布団に入ったところで「おやすみ。大好きだよ」の台詞と共に暗転し、映像が終わる手筈だ。残すはあと1シーンだけ。
 ──東京で初めて迎えるクリスマス。まだ少し先のことだけど、みんなで楽しめるといいな。

 布団を敷きながら思った瞬間、インターホンが鳴った。
「ありゃ、お客さんかな。一旦カメラ止めるね」
 ケンさんがデジカメをテーブルに置き、俺は「誰だろう」と立ち上がった。今日この動画を撮ることはみんな知っているから、ブレイズの誰かが訪ねてきたというのはありえない。こんな遅い時間にセールスでもないだろうし、最近は通販で何かを頼んだ記憶もない。
 記憶はないけど、モニタには配送業者らしい男の人が映っていた。制服に帽子に、手には段ボールの箱を抱えている。……何か頼んだっけ。
「はいはい」
 ドアを開けると、業者の人が「お届け物です」と素っ気ない低い声で言った。サインをして受け取った箱はかなり大きく、しかも何故かひんやりしている。母ちゃんが実家から何か食料を送ってくれたのかと思ったが、伝票の差出人には何も書かれていない。

「あの、どなたから……」
「俺達だよ!」
「わっ……!」
 瞬間──隣の獅琉の部屋のドアが開き、中から獅琉と潤歩、大雅が飛び出してきた。
「えっ、何……どういうこと?」
「確かに届けたぞ!」
「……竜介さんっ?」
 宅配業者だと思っていた男の人が帽子を取って笑う。その笑顔は間違いなく竜介で、俺は目を回しながら動揺してしまった。
「何で? どういうことですかっ?」
「お邪魔しまーす!」
 どたどたと四人が俺の部屋に入ってくる。
「ちょちょ、待ってください! 今、クリスマス用の動画を撮ってて……!」
 箱を抱えたまま慌てて四人の後を追いリビングに入ると、ケンさんがデジカメを構えて立っていた。そして──
「亜利馬、誕生日おめでとう!」
「ハッピーバースデー!」
「……へ?」

 茫然としながらも視線を時計に向ける。零時過ぎ──日付は、十二月三日。
 俺の、誕生日。