ブレイズ、素敵な冬休み! -3-

「まずはちょっと進みながら板に乗る練習だな。前足だけビンディングにはめられたら、後ろ足で地面を蹴って進んでみろ。んで、タイミングを見て後ろ足も板に乗せる。ゆっくりだぞ」
 ようやく先輩ぽくなった潤歩が、自分でお手本をやってみせてくれた。スケボーに乗る時みたいな要領だ。
「あ、見てみて。俺できるかも」
「獅琉はコツを掴んだな」
 俺と大雅も初めはふらついていたが、何とかその方法で滑れるようにはなった。まだ地面が平らに近い場所だから、滑っても怖くはない。
「止まる時は体をひねって前を向け。そして後ろ足のかかとを押し出す感覚で、進行方向に対して板を横向きにさせる。そんでかかと側のエッジに力を入れて止まる。間違っても滑ってる途中前足で止まろうとするな。つんのめって顔面から転ぶからな」

 滑る時は腰と膝を少し落とすこと。真っ直ぐではなくゆっくりと左右ジグザグに降りて行くこと。
「転ぶ時はケツから転べ。手を付いたり頭を打ったりするなよ」
 他の人が滑っているのを眺めながら勉強して、また竜介が付きっ切りで見てくれたのもあり、段々とコツが掴めてきたような気がする。ゆっくり滑るなら、斜面でもいけそうだ。
「よっしゃ、そんじゃリフト乗るぞ!」

「……大丈夫かな」
 初心者コースの頂上で、大雅が不安げに呟く。全然軽い傾斜だから大丈夫だと潤歩は言っていたけれど、こうして初めて上から見下ろすと物凄く……高い、気がする。
 竜介が俺と大雅の頭を帽子の上から撫でて言った。
「さっき教えた『木の葉滑り』で、落ち着いてゆっくり滑れば大丈夫だ。どうしても無理そうだったら途中で止まって、コースの端っこを歩いて下りて来ても良いぞ」
「け、怪我だけはしないようにします……」
「俺、一番!」
「俺も行く!」
 滑り出した潤歩の後を、獅琉が追いかける。元々の運動神経とセンスの良さが加わって、獅琉は既に中級者並みの腕前になっていた。

「俺はお前達の後から行くから、先に滑ってみろ。しっかり見ててやるから心配するな」
「……竜介。本当にちゃんと見ててね」
「任せろ」
 意を決した大雅がボードに重心をかける。左……右……と慎重に曲がりながら下りて行くのを見て、俺も覚悟を決めることにした。
「わ、……」
 ひどく不格好ではあるけれど、これで俺もスノーボードデビューだ。体を曲げ重心を調節し、落ち着いてジグザグに下りて行く。コツを掴むと段々面白くなってきて、下で待っている獅琉と潤歩に手を振る余裕も出てきた。
「いいぞ大雅、亜利馬! その調子だ!」
 竜介の声を背中に受けながら、俺は最高の気分で風を感じていた。

「たっ、楽しかった!」
「……俺も意外と楽しかった」
 大雅と二人で互いの無事を確認し、軽く抱き合う。振り向けばずっと俺達を見ていてくれた竜介がサーッと真っ直ぐ滑ってきて、「上出来だぞ」と褒めてくれた。

 その後、俺達にずっと付いてもらうのは申し訳ないということで、潤歩と竜介は上級者コースで楽しんでもらうこととなった。急遽新たな先生となってくれた獅琉が俺達と一緒に初心者コースを何度か滑り、少し頑張って中級者コースにも挑戦した。

「やってみると面白いもんだよね」
「獅琉さんには合ってるスポーツかもですね」
「ちょっと疲れた。ジュース飲みたい」
 大雅の呟きに賛成し、俺達は三人仲良く休憩所へ向かった。