ブレイズ、素敵な冬休み! -2-

「うっわぁ! 白銀だあぁ!」
 北アルプス連峰の絶景。最高の青空と、真っ白の雪景色。車で進むうち赤い屋根の大きなホテルが見えてきて──午前九時、俺はあまりの嬉しさに大声で叫んだ。
「やったぁ!」
「竜介運転ありがとう。帰りは代わるからね、潤歩が」
「何で俺なんだよ! 獅琉、お前も免許あるだろうが」
「はっはっは、このくらいなら全然へっちゃらだぞ」
 東京から竜介の車で走ること約三時間。寮を出た瞬間から竜介を待つ間も、車内でも、ホテルに着きチェックインをしている間も、俺はずっとわくわくしていた。楽しみ過ぎて昨夜は少ししか寝ていない。それでもコンディションもテンションも万全だ。

「わああぁぁ!」
 十二畳の、綺麗な広い和室。その素晴らしさに感極まった俺は、畳に向かって思い切りダイブした。
「いってぇ! うわぁ、広いー!」
「亜利馬って、いつも『部屋』に対して感動するよね。部屋フェチかな?」
「お、俺本当に広い部屋が好きなんです! 実家とか俺の部屋すごい狭くて汚かったし……」
「確かに亜利馬の部屋は、汚かった」
「確かに」
 大雅の言葉に他の三人が頷いた。夏にみんなを俺の実家へ招待した時、俺の部屋の汚さに四人全員が引いていたのは記憶に新しい。上京した息子の部屋を片付けてくれるような母ちゃんではないのだ。幸い田舎だから家そのものはデカくて、あの夜はみんなとリビングで寝たっけ。

「おい、早く滑りに行こうぜ!」
 いそいそと潤歩が荷物を開けて自前のスノーボード用ウェアやらゴーグルを取り出す。
「……その前に、お菓子食べながら寛ぎません?」
「よっしゃ、亜利馬は留守番な。行くぞてめえら」
「い、行きます! 行きますから置いてかないでください!」

 近場のスキー場までは車で約十五分。もう少し部屋を楽しみたかったけれど、俺達は再び車に乗り込みスキー場を目指した。
「竜介さんはスノーボードとかできるんですか?」
「ああ、去年も潤歩と二人で何度か滑りに行ったな。そんなに上手くはないが」
「大雅は?」
「……できない」
 できなさそう。
「俺もやったことないから、一緒に教えてもらおうよ」
「うん」

 到着してからロッジへ行き、荷物を預けて潤歩と竜介以外の俺達三人はウェアとボードをレンタルした。初心者であることと俺達の体型などから、一番合いそうなものを店員さんが選んでくれた。
「よっしゃ、そんじゃ行くぞ」
 潤歩はさすがにウェアもボードもカッコいい。竜介もキマっていて、大雅じゃなくてもほれぼれしてしまいそうだ。

「潤歩先輩。俺達は初心者だから、初心者コースから滑りたいんだけど」
 獅琉が俺と大雅の肩を抱いて言うと、こちらを振り返った潤歩の表情が露骨に嫌そうなものになった。
「そうだな、まずは三人を滑れるようにしないと」
 竜介もこちらに来てくれて、これで四対一だ。
「仕方ねえ……じゃあスパルタ式でいくからな、五分で全部覚えろよてめぇら」
 無茶苦茶なことを言いながら潤歩がロッジを出て行く。続いて外へ出ると、俺の視界いっぱいに白銀の世界が広がった。
「うっわぁ、綺麗……」
「人も少ないね。俺達ラッキーだったかも」
 思わず雪にダイブしようとして、やめた。飛び込もうと思った瞬間、すぐ近くで俺と同じ気持ちだったらしい小さな子供が奇声を上げてダイブしたからだ。

「よし、まずはボードに乗れ」
「分かんない。潤歩先輩やって」
「クソッタレ獅琉。じゃあ亜利馬と大雅、教えるから獅琉の履き方を見て同じようにやれ。転んで全身骨折しても俺は責任持たねえからな、しっかり見て覚えろよ」
 竜介が俺達の前にしゃがんでちゃんと見ていてくれたからまだ安心できたけど、先生が潤歩だけだったらと思うとゾッとする。

「獅琉が赤、亜利馬が青、大雅が黄色って。信号かお前らは!」
 怒っているかと思ったら、唐突に俺達のウェアを見てげらげらと笑い出す潤歩先輩。……先行き不安だ。