亜利馬、ぶるぶる -7-

「あ、結局亜利馬も捕まっちゃったんだ。全員確保で潤歩の勝ちだね」
「俺様の体力と俊敏さを甘く見んなよ」
 潤歩に腕を掴まれたまま、俺は未だ頬を火照らせていた。
「皆さんお疲れ様です! 撮影終了です!」
 ケンさんがこちらに近付いて来て、「一言お願いします」と一人ずつカメラが向けられる。

「久し振りにこういう遊びしたから楽しかった! 今日はぐっすり眠れそう」
 獅琉が言って、次に竜介の方へカメラが移動した。
「たまには遊びで体動かすのもいいな。運動だけでなくブランコでのんびりもできたし」
「ブランコならずっと乗ってたい。竜介んちの庭に作ってよ」
 大雅の呟きにスタッフの笑いが起き、俺も釣られて笑った。顔が赤いから気持ち悪い笑顔になってしまったけれど。
「俺はやっぱ、最後の鬼ごっこが最高だったわ。勝ったし」
「亜利馬くんは?」
「お、おお、俺はぁ……」
 しどろもどろになる俺の腕を、潤歩がぎゅっと強く掴んだ。
「お、俺はええと、全部面白かったです。一時間ずっとハラハラドキドキでした」

 ケンさんのオッケーサインに、リーダー獅琉がまとめに入る。
「それでは今日は神奈川の某公園からお届けしました! インヘル公式ブレイズチャンネル、これからもどうぞよろしくお願いします!」
「ありがとうございました!」
 最後は全員でポーズを取り、これで一応撮影は終了だ。
「お疲れ様でした! 撤収します!」
「ブレイズの皆さん車にどうぞ! 誰か、中でお茶渡してあげてください!」
 秋風の寒さに身震いしながら駐車場へ向かう四人。再び俺だけケンさんに呼ばれ、さり気なく四人から離れてカメラの前に立つ。

「さて亜利馬くん、どうでした?」
「もう本当に大変でしたよ! 気付かれなかったのが奇跡ですって」
「ということは、亜利馬くんの勝ちだね」
「視聴者さんの大半は、絶対俺が負けると思ってたでしょ。へへ、俺だってやる時はやるんです!」
「おめでとう亜利馬くん! こちら賞品です!」
「やったぁ! ありがとうございます!」
 ギフト用のプリペイドカードを受け取り、俺はガッツポーズでカメラに笑って見せた。後はトイレでローターを取って、何食わぬ顔でワゴンに乗りみんなと帰るだけだ。
 大変だけど楽しかった。アクシデントも色々あったけれど……とにかくめでたしめでたし、だ。

 *

「………」
 数日後。
 配信された動画を見て、俺は頭を抱えていた。

「亜利馬、やっぱり変だったよね。……みんなも気付いた?」
 撤収中にワゴンに乗った俺以外の四人の様子が、別のカメラで撮影されていたのだ。この時の俺はケンさんから金一封を頂き、トイレでローターを抜いている真っ最中だった。
「あれ絶対ケツにバイブかローター挿れてたぞ。あいつ何も言わなかったけど、微妙にバイブ音聞こえてくる時あったし。途中勃起してたしよ……」
 潤歩の言葉に、大雅が頷いた。
「滑り台で亜利馬の上に重なった時、お尻のとこから振動が伝わってきた。……それに触れたら駄目だろうなと思って、黙ってたけど」
「うーん……。何故そんなことを……」
 竜介が腕組みをして首を捻る。
「もしかしたら亜利馬、欲求不満なのかもね」
 獅琉がまとめて、他の三人が「そうかも」と同意した。

 ……あの日、俺はずっと四人から「ケツにローターを入れて仕事をしている奴」だと思われていたのだ。みんなの変な優しさでスルーされていただけで、全員それに気付いていたのだ。
 何も知らずに「勝った」と喜んでいた俺って、一体……。
「やっぱムッツリ小僧だ、あいつは」

 道理であの日以来、みんなが俺に生暖かい視線を送ってくると思った。
「………」
 俺は頭を抱えて床にうずくまり、「早くみんなが今日の動画を見て真相に気付いてくれますように」と心の底から祈り続けた。