亜利馬、正真正銘己との闘い -5-

 そしてついにカメラが回り始めた。
 瓜二つの二人の亜利馬は無表情でソファに座り、じっとしている。カメラがつま先から顔までを舐めるように撮った後で合図が送られ、俺は視線をアリマの方へと動かした。ゆっくりと体を横向きにさせてアリマの肩を抱き、そのつるりとした頬にそっと口付ける。
 アリマの顔をこちらに向かせるため、頭を支える手に少し力を込める。綺麗に彩色された唇へ優しくキスを落とし、ゆっくりと舌で唇を開かせる。フェラチオ機能搭載だから口が開くようになっているのだ。舌も歯もあるし、目を閉じればまるで本当に誰かとキスをしているみたいだった。

「ん、……」
 だけどアリマは唾液を含んでくれないから、唇から垂れて行く一方だ。目も閉じてくれないから何か怖いし……触った感じは柔らかくても温かくても、反応がないと寂しいものがある。
 でも、だからと言って本番中にそんなことを考えていたら駄目だ。例え人形相手のセックスだろうと、これは俺のタチデビュー。……と言っていいのか分からないけど。って、だから余計なことを考えるなってば。

「………」
 物言わぬアリマを相手に、俺は無言で気合を入れた。絶対にファンの人達をがっかりさせないVを撮る。今の俺はそれだけに集中するべきなんだ。
「は、……」
 アリマの唇から垂れた自分の唾液を舌で拭い、同時に少しずつ体重を加えてアリマの体をソファに倒して行く。襟元の赤いリボンを解き、フリルが付いたブラウスのボタンに手をかける。
 開いたブラウスの中から現れたのは陶器のように綺麗な肌、それから薄桃色の綺麗な乳首だ。俺は予め受けていた指示通りにアリマの脇腹へ手を入れて体を引き寄せ、その肩から胸元にかけて流れるようにキスをして行った。
「ん、……」
 ──えっ?

 ぎょっとして顔を上げる。今確かにアリマが小さく声を出したような……。
「………」
 まさかと思ってもう一度胸元にキスをし、その綺麗な乳首を指で摘まむ。
「……あん」
「………」
 どう考えても有栖の声だ。内部から声が出るようになっている。それがこちらの動きに合わせて出ているのか、それとも遠隔で操作しているのかは分からないけれど……とにかくこれは有栖の仕掛けだ。
「気持ちいい、……もっとして」
 これがいずれ商品になるなら、ボイス機能は無いよりあった方が良いのかもしれないけれど……無表情で言われても、正直言って全然興奮しない。
 だけど俺もプロだ。プロの男優っていうのはどんな状況でも勃たせなきゃならんと、前に潤歩が言っていた。

「……もっとする?」
 ならば俺はこのアリマに極上の快楽を提供しよう。
 ──今だけ、俺はコイツの恋人だから。