亜利馬、正真正銘己との闘い -4-

 何とか下を脱がされることなく、四人は各々次の撮影のために会議室を出て行った。
「………」
 ――本当に下も再現されてるんだろうか?
 俺は今もテーブルの上ですましている「俺」に近付き、こっそりジーンズのボタンを外してファスナーを下ろした。誰もいない中で人形のアレを覗き見るなんて、人として凄くマズいことをしている気分だ。
「………」
 だけどやっぱり好奇心には勝てず、俺は震える指でボクサーパンツのゴム部分を引っ張った。恐る恐る中を覗き、確認してみる──

「っ……!」
 下の毛が薄いのは俺に寄せているからだろう。でもペニスは有栖のモデルになっている訳だから、……いや、俺とそれほど変わらない。
「リ、リアル……」
 ちょこっとだけ、パンツに手を入れて触ってみる。
「うわ、柔らかい……ぷにぷにで普通に気持ち良い」
 握ってその感覚を楽しんでいると、ふいに手の中のそれが動いた気がした。
「え?」
 気のせいじゃない。確かに硬くなってきている。
 そういえば有栖が言っていた。コイツには熱で勃起する機能が付いているとか何とか……。
「や、やばいっ」
 焦ってパンツから手を抜いた、その瞬間。

「おい亜利馬。忘れ物しちまったんだけど俺のバッグに……」
「………」
「………」
 会議室に入って来た潤歩が、ドアを開けた恰好のままで固まっている。
「う、潤歩さん、これは……」
 目の前にはすまし顔で座っている俺。ファスナーが下ろされたまま、股間はパンツ越しに盛り上がっていて……
「あ、……」
「違うっ、違うんですこれはぁっ!」
「亜利馬が人形のチンポ勃起させたぞオォ──ッ!」
「やっ、やめろオォォ──ッ!」

 *

 A2~亜利馬×亜利馬のヒミツ遊戯♡
 ……とかいう恥ずかしい仮のタイトルを付けられて、いよいよ俺のタチデビュー、と言って良いのかどうか分からない撮影が今まさに行なわれようとしている。
「亜利馬くん、スタンバイお願いしまーす」
「人形の亜利馬くんもスタンバイオッケーです」
 撮影現場にどっと笑い声が起き、俺は複雑な表情を浮かべながら頭をかいた。

 場所はお馴染みのレンタルスタジオ、セットは少し豪華なアンティーク風の部屋だ。俺とアリマ一号はお揃いのゴシックな衣装を着せられてソファに座らされ、少しだけ互いにもたれ合うように尻の位置や体の傾きを調整された。
「そのまま、キープお願いします」
「驚いた。まるっきり双子だね」
 カメラマンさんも目を丸くさせている。俺が無表情を作ればどっちがどっちか分からないと大袈裟なことも言われたけど、流石にそれは分かってもらわないと困る。

 有栖のことだからそのうち「瞬き機能」「視線機能」、果ては「表情付き」「AI搭載」なんかも開発してしまいそうだ。いっそクローンの研究でもすればいいのにと思ったが、用途が性具な訳だからそれだと問題になるか。

 考えていたら、二階堂監督の声が現場に響いた。
「全体を映したらキスから入って、脱がしと、前戯までを一気に撮るぞ」
「はいっ!」
 ──ああ、やっぱりやるのか。俺自身と。