亜利馬、みんなのお兄ちゃんになる

『亜利馬くんはドジなイメージがありますが、それはブレイズの他のメンバーが大人っぽいからです。亜利馬くんだって、十八歳という年齢にしてはちゃんとしているお兄さんだと思います』
 気まぐれにサイトを覗いてみたら、スタッフブログのコメント欄がちょっとした議論の場になっていた。

『同い年の大雅がアレだから、亜利馬のおチビ感が余計に際立ってますよね』
『オフショットを見てても明るくてワガママな感じじゃないし、周りの皆に敬語だし、言うほどガキっぽくないよね』
『ブレイズの中にいると、どうしても末っ子感が出ちゃうだけでさ。まあそういうイメージで売り出してるから仕方ないけど』

 議題は俺が「子供っぽいか、子供っぽくないか」らしい。自分でももう「末っ子扱い」には慣れてしまったから、今更大人っぽいイメージを持ってもらわなくても構わないのだけれど……

『亜利馬くんはクラスにいたら結構頼れる友人になってくれそう。同い年の集団の中にいたら、結構大人っぽい方だよ』

「やっぱり、分かる人には分かるんだ!」
「亜利馬、ご機嫌だね。何かあった?」
 俺の部屋で寛いでいた獅琉が、ポテトチップを摘まみながら言う。俺はベッドに寝転がっていた体を起こして、鼻高々で獅琉にスマホを見せた。
「なになに」

 コメントに目を通した獅琉が嬉しそうに笑う。
「あはは。撮影にも慣れてきたし、亜利馬もだいぶ成長してるって証拠だね」
「俺だってもう少し背があれば、最初っから末っ子じゃなかったはずなんです。みんな言ってますよ。ブレイズの四人が既に大人だから、亜利馬がガキっぽく見えるのは仕方ないって」
「確かにそうかもね。亜利馬って年齢にしてはしっかり者かも」
 頬杖をついて宙を見つめる獅琉。その大人っぽい物憂げな横顔に比べたら俺なんて全然ガキだけど、獅琉に認めてもらえるというのは嬉しかった。
「うーん……」
「獅琉さん?」

 ポテトチップを口に挟んだままぼんやりと宙を見ていた獅琉が、突然「んっ!」と目を丸めて俺を見た。
「どうしたんですか?」
「いいこと考えたよ亜利馬! 次の企画の案として、亜利馬のお兄さんぶりが発揮できるようなものを俺達で考えて山野さんに渡しておくからさ、楽しみにしててよ!」
「ほ、本当ですかっ?」
「うん。それにファンがこういう書き込みしてるってことは、亜利馬のそういう姿を求めてるってことでもあるしさ。たまには末っ子キャラからお兄さんキャラになるのも、ギャップがあって受けそうじゃん」
 俺は獅琉の手を握って目を輝かせた。流石は俺達のリーダー。愛の伝道師、獅琉。
「よ、よろしくお願いします!」

 なんて、うきうきしていられたのもほんの数日のことだった。

「………」

 ぶれいずようちえん。
 保父さん……亜利馬。
 園児……他ブレイズメンバー。

「あ、あの獅琉さん……俺が想像してた『お兄さん』って、こういうのじゃないんですけど……」
「え、そう? 一番お兄さんらしさが発揮できる企画だと思うんだけど。それにこういうプレイってAVでは基本だしね」
「………」
 自分で作った企画書を手にニコニコ笑う獅琉を、俺は恨めし気に見つめた。