亜利馬、カメラを回して目も回す -4-

「最大の難関だった潤歩さんは何とか突破したけれど、残るは大雅と竜介さんか……」
 翌日になってハンディカムの電源を入れた俺は、深い溜息をつきながら横の潤歩に顔を向けた。
「何か気が重いです。二人とも変に純粋だから、企画と言えど騙すのは心が痛むというか……」
「ほぉん。それは俺が純粋じゃないってことだな。俺の時は全く心が痛まなかったということか」
「ち、違いますよっ。そういう意味じゃなくて……!」
「てめぇマジで、終わったら覚悟しとけよ。掘り尽くすからな」
「すぐそうやって脅しをかける……」

 昨日付き合ってくれた獅琉とバトンタッチする形で、今日は潤歩が俺の傍についていてくれるらしい。イタズラ大好きな潤歩が関わるとなると、何だか今から不安になってくる。
「で、今日は誰が餌食になるんだ」
「今日は竜介さんがターゲットですけど……絶対に変なことしないでくださいよ」
「分かったっつうの。俺は竜介の狼狽える貴重な姿が見れればいいやってスタンスだからよ」

 仕掛けとなる場所は、撮影部屋としてたまに使われている寮の101号室……シャワールーム。撮影前のシャワーを浴びている竜介の元に、昨日潤歩の時もお世話になったマッチョモデルの一人が乱入し、問答無用で竜介にお口でご奉仕するという内容だ。

〈亜利馬、そろそろ始めるぞ。部屋に入って待機していてくれ〉
「了解です。……竜介さん、びっくりするだろうなぁ……」
 念のため潤歩と一緒にカーテンに包まり身を隠していると、「竜介くん、入りました。シャワーお願いしまーす」というスタッフの声が聞こえた。
「いきなりシャワーか。不審がられねえか?」
「竜介さんなら大丈夫そうですね。疑うことを知らないピュア男子ですから」

 シャワーの音が聞こえる。その間に、室内にいた仕掛け人のスタッフ達が部屋の外へ移動する。マッチョモデルが入ってきて、それと同時に俺達もシャワールームへゆっくりと近付いて行った。
 脱衣所の棚の陰に隠れてしゃがみ、今まさにシャワールームのドアを開けようとしてるマッチョさんに頷いて見せる。

「ん。……だ、誰だっ? 何だ急にっ……?」
 ハンディカムを回す俺の目は、竜介のそこに釘付けだ。ブレイズで潤歩の次にデカいブツを持っている竜介のそれは形も色もかなり男らしく、あれが大雅に何度使われたのかと考えると……って、そんなこと想像してる場合じゃない。
「わっ、……何だ何だ、……うおっ、お前……」
 マッチョモデルの唇が竜介のペニスにずぶずぶと被せられる。根元まで呑み込まれて動揺している竜介だが、獅琉や潤歩と比べると彼の反応は少し変わっていた。

「や、やめてくれっ……今は駄目だっ、……う、あっ……」
 何で「今は駄目」なんだろう。ちょっと考えてみたけれど、それよりも駄目だと言いながら喘いでしまう竜介がセクシー過ぎて鼻の奥が熱くなった。
「んっ、ぐ……うぅ、やめろ、って……!」
 フェラチオモンスターの攻撃を受けても歯を食いしばって耐えている竜介。エッチな音がシャワールームに大きく響き、見れば潤歩も目をひん剥いてその様子を凝視していた。
「こんな、ことして……ただでは済まない、ぞ……!」
 ある意味では正しい反応だ。突然乱入してきた男がこんな真似をしてきたら、普通に通報案件なのだから。

「真面目だな竜介さん……」
「さっさと素直になれっつうの……」
 潤歩の願いが通じたのか、竜介がついに音を上げて荒い息を吐き出した。
「は、あっ、……もう、無理だっ……! ん、──あぁっ!」
 マッチョモデルがそこから口を離し、シャワールームの壁に竜介の体液が飛ぶ。

「はぁ、……な、何でこんな……」
「竜介さん、サプラーイズ!」
「え、……」
 マッチョモデルと入れ替わるように飛び出した俺と潤歩を見て、竜介がぽかんと口を開けている。
「ごめんなさい竜介さん、ドッキリ企画でした……!」
 茫然とする竜介がふいに「ぷっ」と噴き出し、すぐにいつもの豪快な笑い方になった。
「はっはっは、な、何だ……企画だったのか! てっきり本当の強姦魔が現れたのかと……!」
「あの竜介さん、『今は駄目だ』って、どういう意味だったんですか?」
 恐々訊ねてみると、目元を拭いながら竜介が言った。
「撮影前に射精する訳にいかないだろ?」
 凄いプロ魂。俺も潤歩も「ほおおぉぉ」と思わず感心してしまったほどだ。

 ──残るターゲットは大雅、ただ一人。