ブレイズ、悪に立ち向かう! -3-

 その日の昼休み。

「教師達と情報屋の何人かに金を握らせてみたが、皆、校長に関する情報は持っていないそうだ」
 生徒会室で紹介された竜介という男はこの街で一番の資産家の息子であり、裏社会の人間や情報屋など、およそ高校生とは思えないような繋がりを複数持っているらしい。
 獅琉が竜介の言葉に頷いて言った。
「亜利馬の予想が本当だとすると、校長は誰にも漏らさずに自分だけで上手く秘密を隠してるってことになるね」
「俺が管理している娼年に女装をさせて誘わせたらすぐに乗ってきたというから、奴の男好きは本物だ。ただ、亜利馬の兄貴に関する情報は引き出せなかったらしい」
「竜介、そんな仕事までしてるのかよ?」
 潤歩が呆れたように言って、「今度俺にも一人買わせろ」と竜介に耳打ちした。

「……となると、俺達だけで真相を暴いてやらないと。亜利馬のお兄さんのために、皆で協力しよう」
「ああ。でも具体的にどうするつもりだ、獅琉」
 獅琉が口元に手をあてて考え込み、少しして何かを決意したような目で俺達の顔を見回した。
「校長室に忍び込んで、証拠を集めるんだ」
「あの鉄壁の校長室をか? どうやって忍び込むんだ、セキュリティ対策万全の銀行の金庫のような部屋だぞ」
 竜介が目を丸くさせると、獅琉が潤歩とアイコンタクトをしてから薄く笑った。
「こういう時にこそ頼りになる『彼』がいるだろ。──大雅!」

 獅琉の声に、今までただのゴミの山だと思っていた塊の中からむっくりと一人の生徒が起き上がった。
「……呼んだ?」
「い、いたのかよ大雅」
「ずっといたよ、竜介」
 眠たげな目をこちらに向ける金髪の美男子に、獅琉が紅茶のカップを渡しながら言う。
「出番だよ大雅。今夜零時から五分だけでいい、ハッキングして校長室のセキュリティ解除を頼む」
「いいけど、……俺への報酬は?」
 大雅が生徒会室のソファに座り、脚を組んで棒付きの飴を咥えた。
「報酬は、そうだな……」
 呟きながら、竜介がその隣に腰掛けて大雅の肩を抱き寄せる。
「抱えきれないほどのチョコレート、っていうのはどうだ? お前の好きなインヘルスイーツのロイヤルショコラを山ほど買ってきて、俺が一粒ずつ食わしてやる。口移しでな」
「……足りない」
「満足するまで食わせてやるさ」
 竜介が棒を摘まんで大雅の口から飴を抜き、自分の口の中へと入れた。濃厚に重なり合う二人の唇。舌の間で飴が転がされている。

 それをつまらなそうに眺めていた潤歩が、生徒会長用デスクの上であぐらをかきながら舌打ちした。
「イチャつくのはそこまでにしとけよ。……で、俺達は今夜零時前にここに集合でいいってことだな。」
「亜利馬、安心していいよ。俺達が力を合わせれば、何だってできる!」
 それまで黙って彼らのやり取りを見ていた俺は、四人の視線を受けて力強く頷いた。
「……ありがとう。頼んだぞ、皆!」