Real Kiss

 午前一時──。

「えー本日もサルベージにご来店ありがとうございます。これよりテキーラナイトのスペシャルステージを行ないます。ステージとパフォーマーに触れる行為は禁止となっておりますのでご注意ください。それではごゆっくり」

 喧しいBGMに乗せてロッソ君がアナウンスをする。もう何百回と言っている台詞なのだろう。句読点も無視して息継ぎすらせずダラダラっと早口で言った後、フロアの照明とBGMが変化した。

 中央の円形ステージをスポットライトが照らし、ピンマイクを通した声を客が聞き取れるように音楽が抑え目になる。今回もステージから暗い客席は殆ど見えないが、見えなくて本当に良かった──

「ふふ、……頼寿様、少し息が荒くなってきましたね」

 偽ロココ調というか、頼寿に言わせれば「今時ラブホでもこんな物使わねえ」という丸型のデカいベッドの上。
 長い脚を投げ出して座る頼寿の上に跨り、まだ若干赤い頼寿の頬を片手で撫でる。

 俺が演じるエドワードは変装を得意とするスパイで、スイッチが入ると設定した役柄に完璧になりきることができるらしい。
 今なりきっているのは「王子を誑かす無敵の男娼」。つい先日初めてセックスをした俺ごときがおこがましいが、まあそういう設定だから仕方ない。

「玉雪。未成熟な制服の下に隠れたお前の白い肌を、ずっと夢想していた。……ああ、まさかお前の胸に抱かれる日がこようとは」
 ……さてはまだ酒が残っているな。こんな台詞、普段の頼寿なら絶対に言わない。

「頼寿様、どうぞ含んで……存分に味わってください」
 言いながら制服のシャツを捲り、背中を反らして胸を露出させる。恥ずかしいけどドキドキするのは、俺の体が頼寿の愛撫を期待しているからだ。
「は、うぅっ……!」
 尖った乳首が熱い。ねっとりと柔らかい舌で転がされれば、無意識に腰がうねって甘い声が出てしまう……

「お前の愛らしい乳首は、俺のような王族の寵愛を受けるためにあるのだな……。俺の舌でこんなに硬く尖らせて、悪い子だ玉雪」
「よ、頼寿様、あっ……!」
「初めて触れた時から乳首が弱点だったな、お前は」

 言ってる意味が分からないし、これは台詞も漫画と違う。
 頼寿、ちゃんと理解してるんだろうか。明日の朝、今夜のステージの記憶が全部無くなってるんじゃないだろうか。

 思わずそんな心配をしてしまうほど、今夜の頼寿は変だった。妙だった。もちろんそれは酔いのせいもあり、概ね漫画の台詞をなぞっているだけだというのも分かっているけど、でも。

「こんなに感度が良く美しい体は初めてだぜ、玉雪」
「っ……」

 いつもと全然違う優しい声と微笑で、そんなことを言われたら──!

「あ、うぅ……頼寿、吸いすぎ……!」
 誘惑しているのは俺のはずなのに、これじゃあ真逆の状態だ。

「ちょ、待って頼寿っ……もういいから、そんな吸わなっ、あぁ……!」
 ヤラシイ音をたてて乳首を啄まれ、強く吸われて──何だかもう、頭の中までふやけてしまう。ローゼオさんに借りたズボンに染みができてしまうのではと心配になるほど、俺の下半身は熱く高ぶっていた。

「……甘いな。いつかの風呂で覚えた薔薇の味がする」
「う、うそ、……やあっ、あ……! あっあ、だめ、頼寿そんな……もういいってば……!」

 この後まだまだやることがあるのに、頼寿は俺の胸から全く離れようとしない。

 ──そうだ。俺は「誘惑」する立場なんだから、ちゃんと主導権を握らないと。

「よ、頼寿様……そんなに胸ばかり愛されては、別のところが嫉妬してしまいます」
 握った頼寿の手を俺の股間に導くと、ようやく頼寿が俺の胸から顔を上げた。

 よし。ここからだ。